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第25回「佐藤栄作賞」受賞者インタビュー




最優秀賞受賞者 廣瀬淳一さん



論文題目 「アフリカの生活世界をつくる地域共同体のちから-多元的価値の共存と国連に対する期待


  もともとは、神戸大学大学院で「比較社会学」、「比較教育発展論」を専攻して
いました。関心は、文化的背景を異にする社会で生まれた制度や概念が、ある社
会に移入され定着するメカニズムを研究することでした。
 
 学生時代は、アフリカの開発について学ぶゼミにも参加したのですが、なかなか
具体的なイメージを持てないでいました。
 
 その後、青年海外協力隊の村落開発普及員として、大洋州パラオに派遣され、
ホームステイをしながら、2年間漁業協同組合での活動を経験しました。その
間、冠婚葬祭や自然資源の利用方法を含めた、村落社会の決めごと、コモンズ
について調査を進めました。
 
 その生活の中で、村落の人々の生活が、全くもって合理的と思える事例に数多く
遭遇しました。住民が幸せを感じて暮らせるならば、スウェーデンのように権利
ベースの考え方で支えられている社会もあれば、親族の絆で連帯を支えている社
会もあると実感しました。
 
 こうしたそれぞれの方法による紐帯を活かして、異なる社会とつながっていく可
能性を模索しました。その際に出会った理論的な切り口として、欧州連合の「補
完性原理」と、国連大学が取り組んでいた「インターリンケージ」でした。これ
らを、土台にして、従属ではなく、相互依存できる仕組みを調整できる機関とし
て、国連の機能に改めて注目しました。
 
 国連関係のホームページを見ているときに、佐藤栄作財団の論文募集を目にしま
した。「アフリカの貧困」という大きなテーマでしたが、パラオの友人たちの生
活を思い起こすと、行ったこともないアフリカが、すこし近づいてきました。
 
 まとめのところで触れたのですが、地球というハードウェアを共有する人間です
が、社会を動かしているソフトウェアは、いろいろあるようです。それらのソフ
トには、様々な優れた機能があり、一概にどちらがよいとはいえませんが、アフ
リカの社会の中では、合理的に働いている部分もあるのではないか、という思い
を持ちました。
 
 パラオからアフリカを考えるきっかけをもらい、こんどはアフリカの知恵から学
んで、パラオを考えています。世界は確かに違うことも多いけれど、人間を中心
に考えてみると、共通するところも多いように感じました。





2009年7月10日


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